中小企業診断士は取得しても使えない。そんな話を聞いたことありませんか?
おそらく、こんな悩みを抱えている人がいるのではないかと思います。
- 中小企業診断士資格は使えないと聞いたので、勉強しようか迷っている
- 中小企業診断士資格の勉強をしているけど、取った後のイメージが湧かない
- 苦労して中小企業診断士資格を取ったけど、生かし方がわからない
私は中小企業診断士の有資格者で、いわゆる企業内診断士(独立しないで企業に勤め続ける中小企業診断士)です。
中小企業診断士協会や研究会などに所属もしていないため、企業内診断士に分類されているだけのことです。こだわりや理由があって企業内診断士をやっているわけではないということです。
一時期は副業などの活動もしていましたが、いまは何もしていません。下手なブログを書いているだけです。
そうです。普通の会社員です。
そんな私がいうのもどうなのかな、とは思いますが・・・💦
結論からいうと、私は中小企業診断士の資格は「使える」と考えています。
でもどうして資格を使えてもいない私が、中小企業診断士資格は「使える」なんていえるのでしょうか。
それは、実際に人生を変えている人たちを間近で見ているからです。「人生を変えてくれる資格」という噂を聞いて始めた資格の勉強でしたが、私はそれ、あながち間違ってはいないと思います。
しかし、資格を生かすためにコツやポイントがあることも事実です。
今日は、中小企業診断士資格を使えていない私の視点から、なぜこの資格が使えないという議論が起こりがちなのかを書いてみたいと思います。
最初に、中小企業診断士の定義について簡単におさらいしておきましょう。
皆さんには少しくどいかもしれませんが、後のために前提をおさえておく必要があるので、少しの間ご辛抱ください。
中小企業診断士は「幅が広い」資格
中小企業庁のHPには、診断士の業務と役割が掲載されています。
全文を読む必要はありません。ハイライトの部分だけにご注目ください。
【中小企業診断士の定義】
専門的、という点は納得できますよね。
経営者を支援する立場の中小企業診断士が専門的知識を持っていることは、ある意味当前の前提です。
一方で、「幅広い(幅広く)」という表現が3カ所も出てきますね。
専門的なだけじゃない。幅広くもある。このあたりに中小企業診断士の特徴がありそうです。
では、「幅広い」ってなんでしょうか? 私は2つあると思っています。
1つは、仕事の幅の広さです。
顧客企業(クライエント)の経営診断に限らず、公的機関での経営相談窓口、補助金の申請、雑誌や書籍の執筆、予備校講師、セミナー講師など、実に様々な仕事があります。
補助金のライティングだけやっている、なんて人もたまにいますが、稼いでる人はマルチです。
たとえばですが、
- 今日はよろず相談で窓口対応業務。
- 明日は資格の予備校で講師。
- その翌日は顧問企業で経営コンサルティング。
こんな風に一人何役もこなす感じです。
常に複数のコンロに火が着いている、といったら少しイメージがつきやすいでしょうか。
実際に診断士の方がこれを読んだら、「そんなの当たり前じゃん」、「3つや4つじゃ物足りないね」と笑うかもしれません。彼らは非常にタフで、「幅広い」仕事をこなします。
もう1つは、関わる人の幅の広さです。
クライアントと向き合うだけにとどまりません。
行政や金融機関との連携役もこなします。多くの人とのハブ役を果たすということです。
また、診断士は「競争よりも協業」なんていわれたりもしますので、診断士同士で連携する場面もあります。
私も診断士になってみて思いましたが、本っ・・・当にたくさんの人と知り合いになることができます。
したがって、他の資格に比べて、業務の範囲、関係する人の範囲が広いといえるでしょう。
そういった幅の広さは、一次試験の試験科目数の多さにも表れています。
7科目って、大学受験より多いじゃん…💦
さて、こうした中小企業診断士の「幅広い」という特徴をおさえた上で、本題に入りたいと思います。
中小企業診断士資格を取得した後の現実
結論、やっぱり持っているだけじゃダメなんですよね。
え、やっぱりダメなんだ。でも、難しい資格なんでしょ?
仕事来ないの?
違うんですね。そんな感覚は甘いのです。
私は資格を取りさえすれば、以下のような人になれるのかなと思っていました👇
- 誰かから仕事の声がかかる
- 副業もガンガンやれる
- 職場では部署異動の希望が通りやすくなる
職場では、経営企画部とかに異動希望が通るんじゃないかな~・・・なんて淡い期待がありました。
でも、現実にはそんなことはありません。
40代、社内コネなし。経験なし。
特別なスキルも実績もないのだから、当たり前ですよね。
職場の外でも、仕事のきっかけになるかと思って、診断士の会合に出たり、研究会に所属してみたりしました。
当時は長年かけて取得した資格に舞い上がり、半ばハイになっていたので、ガンガン活動することはそれほど苦ではありませんでした。
でも、名刺が増えるばかり。一向に仕事は来ません。
そりゃ、そうですよね。知り合いを作れば仕事が来るなんて、そんな甘い世界はありません。
人脈でのしていける人もいるかもしれませんが、私はそもそも人見知り & 人付き合いが超苦手です。
そんな時、ある先輩診断士の方が以下のように言いました。
資格になんとかしてもらおうとしている人ってダメなんですよ。
資格ってものは、使って、使いまくって、使い倒すんです!
ガツーン! と殴られた気がしました。
私はここで初めて、自分が資格になんとかしてもらおうと思っていた人間だったと気づくのです。
このことをきっかけに、じゃあいったい自分はどうしたらいいのだろうと、迷走が始まります。
中小企業診断士資格は使えないといわれる3つの理由
さて、それではなぜ、「診断士資格は使えない」という議論が起こるのでしょうか。
「資格になんとかしてもらおうと思っているから」だけでしょうか。
もう少し掘り下げてみてみたいと思います。
私は中小企業診断士資格が使えないといわれる理由は、3つの「壁」があるせいじゃないかと考えています。
- 資格の性質の「壁」:独占資格ではないから
- スキル欠如の「壁」:資格を生かせるだけのスキルや素養が備わっていないから
- 性格不適合の「壁」:中小企業診断士の仕事に性格が合わないから
ひとつずつ見ていきましょう。
資格の性質の「壁」:独占資格ではないから
「資格になんとかしてもらおう!」という人は、まずこの壁に阻まれると思います。
まず、独占資格とか独占業務といいますが、資格は業務独占資格と名称独占資格の2つに分類できます。
業務独占資格というのは、その資格を持っていなければ業務を行うことができない資格を指します。
弁護士、会計士、税理士、美容師などがそうですね。たとえば税理士でもない人が、個別の節税対策を教えることはできないのです。
一方で、名称独占資格は、その資格の所有者だけが肩書を名乗ることができます。中小企業診断士がそうです。
経営診断に超秀でたコンサルタントも、無資格のままでは中小企業診断士とは名乗れないのです。
さて、ここで質問です。
もしあなたが飲食店を経営している経営者だとします。
最近、お客さんがどうしても入らない。売上を伸ばしたい。そう思たら、以下のAかB、どちらの人(コンサルタント)に仕事を任せたいでしょうか?
Aさん:
診断士の資格なし。飲食業界に30年間勤務。店舗立上げ、設営、人事、集客、マーケティング、店舗運営、撤退など、一連の業務をやってきた。1,000店以上の売り上げ改善実績がある。
Bさん:
診断士の資格あり。他業界の営業職として7年間勤務。飲食業界の経験はないが、診断士協会の研究会で飲食業界の勉強を1年間やった。
いかがでしょうか。
ほとんどの人は、Aさんではないかな、と思います。
資格の有無なんて、経営者にしてみたら関係ないのです。
自分の店の売上や利益を上げてくれるか? 儲けさせてくれるか?
目の前にいるコンサルタントは答えを持っているか? そこが問題なのです。
決して中小企業診断士の資格を持っているかどうか、ではありません。
ここをはき違えている人が多いのではないかと思います。つまり、難しい国家資格なのだから…
- 独立したら仕事が来るだろう
- 経営者から信頼されるだろう
- 会社で評価されるだろう
- 転職市場で評価されるだろう
なんてことはないんですよね。
先ほど申し上げましたが、私には、難しい資格を取ったのだから仕事が来るだろう、こんな気持ちがどこかにあったのだと思います。
甘い、甘い…。
先ほど中小企業診断士の定義を見た時に、「幅広い」という特徴がありました。つまり、仕事の幅が広い分、独占業務がない。ライバルは資格を持っている人だけではないのです。
資格がなくたって、「ココナラ」とかでスキルをガンガン売ってる人、たくさんいますもんね…。
誤解のないようにいいますが、業務独占資格だって、もちろん仕事は向こうからやってくるわけではありません。
弁護士だって、税理士だって、AIに仕事を奪われるぞと脅かされる時代です。
ただ、業務独占資格の場合は、ライバルは資格ホルダーに限定される、といった利点はあるでしょう。
中小企業診断士は、名称独占資格。
名称独占資格は、資格を名乗れない人(中小企業診断士でない人)もライバル。
「資格になんとかしてもらおう」という人は、この壁にはね返されます。私のように・・・。
スキル欠如の「壁」:資格を生かせるだけの素養が備わっていないから
資格は基本的には、それ単体で持っていても意味をなしません。
何かの資質と結びついて、初めて意味をなします。
「資格は掛け算」とか、聞いたことありませんか? スキルでも、特別な人脈でも、他の資格でもいいです。
以下のような感じ結びついてこそ、力を発揮する のです。
左側(青字の方)がゼロだったら、資格(右側)を掛けても、ゼロになっちゃうね…。
経験、スキル、人脈、スキル・・・。何かと資格が結びついてはじめて、強さを発揮するのだと思います。
図示すると、以下のようなイメージです。たとえば、会社員として磨いてきた経理のスキル。そこに診断士資格という「幅の広さ」が面として掛け合わされる。
「点と線が合わさって体積になる」といってもいいでしょう。
たとえば、私みたいに貿易の業界に20年以上いる人間。
特殊な場面でニーズがあるかもしれません。いままで国内だけで戦ってきた中小企業さんが、貿易のイロハを教えてくれとか、でしょうか。
しかし、貿易業の営業経験が「ある」だけでは不十分です。
ここまでやるかというくらいにコンテンツを作り込んで、差別化しないと、ライバルには勝てないのです。
私はこれがダメでした。
商社での営業経験が長いのですが、自分のスキルを掘り下げることができず、診断士資格と結びつけることができませんでした。
ある仕事を長~くやっていれば、それは強みでしょうか? いいえ。仕事に従事した年数と強みは、必ずしも比例しないのです。惰性でやっている人、なんとなくの「勘」や「経験」でやっている人、いませんか?
「自分がどんなことに興味を感じて、好きで、何が嫌いか」。経験の奥底にある個人の価値観に深く結びついていることがポイントだと思います。
深く深く自分のことを考えている人、ともいえます。
結局私は資格という道具は取得したものの、どう生かしたいのか、自分にはどんな資質があるのかもわからないままに、迷走した数年間を過ごしすことになりました。
自己分析が、まったく足りていなかったのです。
深い価値観に基づいた自分の資質。それに気づかないと、スキル欠如の「壁」にはね返されます。
性格不適合の「壁」:中小企業診断士の仕事に性格が合わないから
3つ目の「生かせない」は、単純に性格が合わないという理由です。
診断士の仕事に自分の性格が合わないと、「壁」に阻まれます。
私は、たぶん中小企業診断士の仕事に性格が合いません。もう少し丁寧にいうと、THE・中小企業診断士のモデル的な仕事には、まったく向いていません。
私、この年になってある程度はヒトに免疫ができてきましたが、多くの人と会うと疲れてしまいます。
「人間嫌いのマーケティング」の著者である林直人さんも書いていましたが、他の人の「気」に負けけてしまうのです。
以下は、私がとある中小企業診断士協会に所属していた時の話です。
毎年、診断士協会では、資格を取得したばかりのフレッシュ診断士を勧誘するためのフォーラムがあります。
資格取得2年目の私は、フォーラムの実行委員を務めていました。
当日、会場に向かったら、人の多いこと、多いこと。200人を超える来場者がいました💦
私は幼少のころからHSP気質で、雑踏に行くと頭痛がしたり、身体が重くなったりの症状が出ます。
母がよく、「あんたは本当に人混みが苦手なんだねぇ…」と言っていたことをよく覚えています。
そんな私が200人を超えるフォーラムに参加し、その後の懇親会に出席し、さらには2次会にも出ました。
その日はヘトヘトになって帰りました。でも、、、翌朝は布団から起き上がれなかったのです。
ようやく昼過ぎに布団から這い出たのですが、その日は頭の芯がボーっとして、ものを考えることができません。
前日のあまりの人の多さに打たれて、「気」が枯れてしまったのです。
仕事の内容においても、一般的な中小企業診断士は、実に多くの人たちと接触します。
前述しましたが、中小企業診断士は、経営者と面談することだけが仕事ではありません。
国、商工会議所(商工会)などの公的な仕事も数多くあります。当然、様々な場所で、様々な人との接触が生じます。
私はある時、ベテラン診断士の方の一日に同行させていただく機会に恵まれました。
それがもうアクティブすぎて…。
朝は経営者の事務所で面談、車移動、午後は商工会で面談。その次の異動先では別の商工会で面談…。
いつ休んでいるんですか?と聞いたら、日曜のみということでした。でも日曜の夜は仕事をしていると。
それでも会社員よりは充実しているという話でしたが、私には無理だなと思いました。
私のHSP気質だと、仕事を選べるベテランの域に達するまでに、エネルギーが枯渇してしまうでしょう。
仮に私が勢い独立して、10年後くらいにソコソコ仕事を選べるようになったとします。
でも、アクティブに動き回る診断士たちに、同じ土俵で勝てるわけがないのです。
自分の性格と一人向き合って、どのように生かすのが最善かを徹底的に突き詰める必要があります。
自分の性格をよく知らないと、性格不適合の「壁」に阻まれます。
資格を生かすためのアプローチ
私は、いまのところ中小企業診断士資格をほとんど活用できていません。
それは使えない資格だったわけではありません。
診断士資格の使い方を知らなかったから、正しく使えていなかったからだと今はわかります。
資格は掛け算だといいました。私はいま、資格という武器を手に持っています。でもその武器を使うための資質が足りないのです。
ではどうするか? 2つのアプローチがあると思います。
- 自分を知る: 自分を徹底的に棚卸して、スキルと呼べるものを掘り出す
- 需要を知る: 需要の高いスキルを把握して、それに見合った専門性を身につける
自分を知る=自分の内側を探るアプローチといえます。強みを知る、ともいえます。
需要を知る=自分の外側を探るアプローチといえます。機会を知る、ともいえます。
SWOT分析 の考え方、ですね。
自分の性格、適性、価値観を踏まえて、本当に行きたい道を見つけた人は強いと思います。
性格が合わないのであれば、そこで戦わなければいい。合うような使い方を見つければいいのです。
業務独占資格ではないからこそ、使い方はその人次第。どんな使い方をしたって間違いではないのです。
私は使える資格を使えない資格にしてしまいました。自分を知らなかった、資格のことを知らなかったからです。
だから3つの「壁」に阻まれた。
あと数年間をかけて、専門性といえるくらいの知識とノウハウを身につけていこうと思います。何らかのスキルを体系的に獲得するため、学校に通ったりするかもしれません。
もちろん今度は、資格を取得するための勉強ではありません。きわめて実践的な力を得るための勉強です。
まとめ
使えない資格、使いづらい資格と言われる理由として、以下の3つの「壁」を挙げました。
- 資格の性質の「壁」:独占資格ではないから
- スキル欠如の「壁」:資格を生かせるだけのスキルや素養が備わっていないから
- 性格不適合の「壁」:中小企業診断士の仕事に性格が合わないから
資格を取ったばかりの人は、ハイになり活動し、ある時ふと立ち止まります。
自分は資格を生かせていない。どう生かしたらいいのだろうか? そう悩む人がいると思います。
そこにある「壁」の存在に気づいていないからです。
特に40代以降で取得した人は、社内でも評価されない、転職にも使いづらい・・・。
そんな悩みに直面するかもしれません。ではどうするか?
使える資格にするために、自分を深く見直せばいい。
資格をよりよく使うコツとして、自分のアイデンティティと深く向き合うことを推奨します。
表面的な強みではなく、自分のルーツや価値観まで降りていって、深く自分と向き合う内省。
深い内省を伴う強みの発見の仕方については、また別の機会に書いてみたいと思います。
ここまでお読みいただいて、ありがとうございました。
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