電話嫌いの私たちはなぜ、電話というツールを完全になくせないのか

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電話は害

一体、これほどまでに否定されるコミュニケーションツールが、他にあるでしょうか?
電話は害。電話は不要。そんな議論によく出くわします。

電話を不要と考える人のポイントは、主にこんな感じですよね。

生産性の低下:作業が中断される、集中力が遮断される
記録性の問題:話した内容が記録に残らない
そもそも不平等:発信者が得をし、受信者が損をする(文字起こしをしなければならない)
情報の独占化:情報アクセスが当事者のみに限定され、共有されない

カリフォルニア大学アーバイン校の研究によれば、突然の電話により遮断された集中力は約23分戻らないという結果が出ています。時間の長短はいったん置いておいても、結果は多くの方にとって頷ける点ではないでしょうか。

特に、ボッチで内向的な私は、オフィスにいるだけでも緊張するため、出社する日はドッと疲れます。
そこに追い打ちをかけるように電話が鳴ったら、エネルギーが枯渇するだけです…。

電話不要派の意見

電話不要派の代表格として、堀江貴文氏が著書『多動力』の中で、「電話してくる人とは仕事するな」と言っています。
なるほどそのとおりだな、とうなずけます。

というのも、多くの発信者は、電話を受けた相手がその後どのような作業をするのかを想像していないことが多いからです。なんであんたたちの言葉を私が文字起こししてその先に伝えなきゃいけないんだよ! と獣のように叫びたくなります。

これ、対面営業でも同じことがあります。
ある日、取引先から電話が入り、「いまから訪問してもいいですか?」と言われることがあります。

こういう電撃訪問マンは、相手の時間を考慮しないという意味で、電話好きマンと思考回路が同じです…。

コロナを経てだいぶ減ったけど、こういう営業マンはまだいますよね…。

電話に戻ります。電話を受けるということは、メッセージを受け取ること。受け取ったら、多くの場合その先にいる誰かにまた伝達しなければなりません。つまり受信者側は、発信者の言葉を整理して書き起こす義務を負わされるのです。

だから私は電話を取りたくないのです。相手によっては絶対に出ないと決めこみ、メールが入ることを辛抱強く待ちます。
自分の言葉を文字化できないような無責任な人とは、本当に仕事をしたくありません…。

電話必要派の意見

さて、電話が必要だという人ももちろんいます。
そんな人の意見も見てみましょう。

1. 話すことでしか伝わらないことがある
2. 急ぎの要件は電話の方が早い
3. 電話で仕事する相手もいる

分からなくもない、って気にはなりますよね…。
しかし、これらに対しては、次のように反論することができます。

 1. への反論:語彙が少ないか、ビジネスライティングを知らないだけでしょう。伝え方を学んでください。
 2. への反論:LINE、TEAMS、LINEもあります。電話以外のコミュニケーションの選択肢は検討しましたか。
 3. への反論:本当に相手がそれを望んでいるのか、確認したのですか。

ただ、厄介なのは3つ目です。意思決定において電話というプロセスが重要な意味を持つ人だっているのです。
電話が大嫌いな私が電話を完全にやめられないのは、唯一この点なのです。

たしかに自分より偉い人が電話好きだと、さすがに無視はできないかも…

そうなのです。チャットやメールなど効率の良いコミュニケーション手段が、必ずしも正解というわけではありません。
元・三菱サラリーマンで著名な投資家の穂高唯希氏は「人生は往々にして逆説的である」と考え、コミュニケーションに労力をかけることが時として最大の近道になると述べています。

込み入った話や相手との認識がずれそうな案件ほど、対面やオンラインでコミュニケーションを図る方が近道である場合があります。相手の人となりに理解が深まれば、結果、コミュニケーションにかける時間や精神的疲労は少なく済むものです。

『経済・精神の自由を手に入れる主体的思考法 #シンFIRE論』

当然ですが、相手がいてこそ仕事が成り立ちます。
仮にですが、

  • 相手が大事な取引先で、電話や実面談のようなコミュニケーションを求めているとしたら?
  • 相手の意思決定プロセスに、対面や電話での会話が含まれているとしたら?

それらを無視することは容易ではないでしょう。

すべてのコミュニケーションをメールやチャットで済ませることのできる企業もあると思います。
でも、それはその業界、企業文化、従業員数、顧客層などにも依拠します。簡単に論じられる話ではありません。

日本はもともとハイコンテクスト文化と呼ばれ、「阿吽の呼吸」、「ツーカーの関係」などの言葉があります。
相手の顔色を窺ったり、言葉の空白を読んだりすることが求められる、そんな文化です。

残念ながら、誰もが堀江氏のように振る舞えるわけではないのです。
交わせる電話は交わしながら、うまく付き合っていくしかないのでしょう。

苦虫を噛み潰したような顔で、私はきっと明日も電話を取るのです…。

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