商社マンってどんな人? どんな人が向いているの?
20年間商社マンを間近に見てきた私が、そんな疑問に答えていきます。
この記事をご覧いただければ、商社マンの概要が掴めると思います。
ここでは、総合商社の営業職を前提にしています。
今回は、心・技・体の3つの側面から、商社マンの素質として代表的なものをあげてみました。
商社マンに向いる人ってどんな人?(営業職を前提に)
まず結論からです。
- 心(性格・気質):
・前向き
・好奇心が旺盛
・他人に感心がある
・メンタルが強い
・チームワークを大事にする
・自社のリソースを躊躇なく使う - 技(知識・能力):
・論理的に考えられる
・情報処理能力が高い
・情報伝達能力が高い
・コミュニケーション能力が高い
・自学自習する力がある - 体(体力・耐性):
・身体が頑丈である
・健康意識が高い
それでは、1つずつ見ていきましょう。
心(性格・気質)
前向きである
たいがいの商社マンは、とても前向きです。
当然彼らだって、失敗もします。下手をすれば、億単位の損失を出すことも…。しかし、「あぁ、自分はだめだ…」なんてことを考えたりしません。
実に切り替えが早い!
お客さんとの契約面で見落としがあった、為替ヘッジを忘れて多額の損失を出したーー。
そんなケースが社内で教訓として共有されることがあります。多額の損失を出してしまった時、普通のメンタルであれば激しく落ち込みますが、彼らはケロッとしています。
以前、損失を出した同僚に対して、なんでそんなに平然としていられるのかと聞いたことがあります。彼はこう言いました。
- 「次の仕事で取り返せばいい」
- 「トータルでプラスになればいい」
へぇー! と思いました。一緒に仕事で関わる身としては、もう少し落ち込んでくれよと思うこともしばしばですが…。
そんなメンタルの強さ、私もほしいです…。
そう思うのですが、実際に私はそうなれないでしょう。なぜなら彼らの前向きさや自信の強さは、過去の成功体験の蓄積によって獲得されたものだからです。少しマインドや行動を変えようとしたからといって、一朝一夕で身に着くものではありません。
好奇心が旺盛である
商社マンの適正として、好奇心の旺盛さがあります。
新しい経験に対してオープンで、様々なことに関心が高い人が多いです。
一般的に、未知の仕事や分野に取り組む時って不安がありますよね。
たとえば、
- 訪問れたことのない国への出張や駐在に出る時
- 誰もやったことのない仕事のメンバーとして任命された時
さて、どのように感じるでしょうか?
「自分にできるだろうか」、「失敗しないだろうか」という不安は、多かれ少なかれだれしもが感じるでしょう。
しかし彼らは、そうした不安にも勝る好奇心を持っています。
新しい経験に対して常にオープンな姿勢を維持できる人は、商社マンの資質があるといえます。
他人に関心がある
他人への感心が高い人は、商社マン向きでしょう。彼らは上手に社内・社外の人脈を作ります。
決して喋りがうまい必要はありません。むしろ相手の話をよく聴く人が重宝されます。
「聴」の字は、耳と十の目、心で構成されていますよね。他人への関心は聴くことにより表されます。
私の知るある商社マンは、「商談では聴くのが8割、話すのが2割」と言っていました。
寡黙で穏やかな人ですが、部署のエース人材です。
当たり前ですが、自分の主張だでけは商談は成り立ちません。
相手に関心を持ち、相手の目線で物事を考えられる人は、商社マンの適正があると思います。
メンタル(心)が強い
メンタル(心)の強さは、商社マンの仕事に必要です。
引きずらない人、動じない人って、身近にいないでしょうか。
たとえば商談に失敗したとしても、お客さんや上司に怒られたとしても、次に向けてすぐに動ける人は、商社マンの適性があるといえます。
体育会系人材が好まれる理由は、このあたりにあるのかもしれませんね。
たまにこんなマインドを持っている人がいます。
商売で1億円損したってさ、別の商売で2億円儲ければいいじゃん。
少し乱暴な感じはしますが、試合で1点取られたら2点取り返せばいいという感じですね。
本当はミスなくやるのがいいのですけど…。
「過ぎたるは及ばざるがごとし」、「覆水盆に返らず」。
こうした割り切りができるタフなメンタルを持ち、気持ちを上手に切り替えられる人は、商社マン向きです。
チームワークを大事にする
どんな仕事においてもチームワークは必要ですが、商社においては特に大切です。
商社は基本的に生産設備を持ちません。裏を返せば、ヒトが最大の経営資源です。個人プレイに走らず、常に他人と助け合い、一緒にやっていく意識が大切です。
「和を以て貴しとなす」。チームワークを重んじる外向型が商社マンに理由でしょう。
自社のリソースを躊躇なく使う
自社のリソースを使い倒せる人は、商社マンとして結構大事な要素だと私は考えています。
さて、自社のリソースってなんでしょうか?
もちろん社用車もPCも会社のリソースです。分かりやすいところだと、「ヒト・モノ・カネ・情報」はそうですね。最近だと「時間」も入るのでしょうか。
さて、ヒトも会社のリソースなわけですが、たとえば緊急の案件が発生した時、「今から打ち合わせさせて! 何時なら空いてる?」と、遠慮なく予定をぶっこんできます(ちなみに私は巻き込まれる側の方です)。
法務部、財務部、調達部、様々な部門がありますよね。そうした社内の共有リソースを、彼らはガンガン利用します。
今あの人忙しいかな…
機嫌を損ねたらどうしよう…
なんて気持ちは持ちません(ちょっとはあるかもしれませんけど…)。
いきなり打合せ依頼を入れるやり方に、賛否はあるでしょう。私も正直、いきなり自分の時間を奪われることを快くは思いません。
しかし、他者の時間を使い倒し、直面している問題の解決や、より大きな利益の獲得に繋げていく人は確かにいます。
結果を出せばいいんでしょ? そんな極論のマインドも必要なのかもしれません。
自社のリソースを使い倒せる人は、商社マン向きといえます。
技(知識・能力)
論理的に考えられる
論理的思考は、商社マンに必要でしょう。
論理的思考は、決して学歴の高さとイコールではありません。後天的に獲得可能なものだからです。
貿易には、契約上のトラブル、デリバリー遅延など、常にトラブルはつきものです。
いちいち感情で応じていたら務まりません。
冷静かつ論理的に物事を考えられる能力が必要です。
情報処理能力が高い
「浅く、広く、速く」 情報を集める人が、商社マンに向いています。
上手に情報を集めてくる人って、周りにいませんか? そういう人は、ニュース、新聞、競合や取引先の決算情報などの情報が出れば、いち早く入手します。場合によっては、情報が公になる前に入手します。人的ネットワークを持っているのですね。
情報を集めるだけでは、単なるコレクターにすぎません。優秀な商社マンは、集めた情報を分析します。
そして得た情報から仮説を立てて、社内や社外のキーマンと面談し、自分の考えの裏付けを探してきます。
演繹(えんえき)的な思考法が上手だともいえるでしょう。
一方で、とことん考えを突き詰めるような、学者タイプは少ないです。
知りたいトピックの全貌を10割とすると、6~7割くらいまで分析する感じです。
情報に対してほどよい執着心を持った人が、商社マンに向いているでしょう。
逆に、とことん真理を追求したいという人には向いていません。
情報伝達能力が高い
情報伝達力、すなわち発信する力や報告する能力の高さも、商社マンには必須のスキルです。情報は鮮度が大事ですよね。冗長性を排して、要点を完結に伝えることは、仕事において不可欠なスキルです。
できる商社マンの引継書やレポート等を見ていると、極めて簡潔で、要点が抑えられています。常日頃から物事を体系的にとらえようとしている表れでしょう。
メールの文章においても、結論→理由→証拠→結論(PREP)が徹底されています。
情報伝達力は、後天的に獲得可能なものですが、入社の段階で備えていたら強みになります。
商社マンに必要なスキルです。
コミュニケーション能力が高い
コミュニケーション能力は、商社マンにとって必須といえるでしょう。
時に商社マンは語学力が必須などと言われますが、私は必ずしもそうは思いません。
語学は入社してから、もしくは海外実務に従事してからでも、なんとでもなるからです。
語学は最初は下手でもいいのです。恥ずかしがらず、自分の言葉で相手に伝えようとする意志が重要です。前段でも書きましたが、相手の主張や考え方を「聴く」力も含まれます。それはすなわちお客さんのニーズをくみ取る力ともいえます。
商社マンにとって、取引相手は海外のお客さんが多いです。異なる文化圏に暮らす相手が何を欲しているか、それに対して自分は何を GIVE できるのか?
相手のニーズを汲み取る、自分の言葉で伝えようとする。このようなコミュニケーションを取れる人は、商社マン向きでしょう。
自学自習する力
スピード感のあるビジネスの中で、自学自習する力は必須です。
自分が獲得すべきスキルを考え、貪欲に学ぼうとする姿勢を持つ人は、商社マン向きでしょう。
先ほども書きましたが、基本的に生産設備を持たない商社にとっての最たる経営資源は「ヒト」です。
その分商社は、ヒトへの投資に積極的な傾向があります。たとえば社会人大学院への派遣制度を設けている会社もあります。
優秀な商社マンは、そうした会社の教育制度を活用し、スキルの獲得を目指します。
また、自費で大学院に通ったり、業務に関連する資格を取得する人もいるでしょう。
自学自習できる力は、商社マン向きです。
体(体力)
身体が頑丈である
ハードワークに耐えられる頑丈な身体を持つ人は、商社マンに向いています。
国内メーカーと海外のお客さん、もしくは海外のメーカーと海外のお客さんをつなぐのが商社の仕事です。
時差との戦いは、商社マンの宿命ともいえるでしょう。
スポーツで実績を残した方が商社マンに多いこともうなずけます。
ラグビー、アメリカンフットボール、野球、サッカー、柔道など、学生時代に活躍したアスリートの猛者たちは、商社マンとしての素養を備えている分、採用時にアドバンテージを持つともいえます。
ちなみに私の昔の上司は、むかしは月間200時間の残業は当たり前だったと誇らしげに言っていました。
その人、身体を壊しましたが…。
一方で、できる商社マンを見ていると、「365日間いつでも商社マン」という気がします。
週末はゴルフ、PCを開いて仕事、平日夜は酒の付き合い、時に麻雀…。こういう過ごし方にも適応します。
移動が多いのも商社マンの特徴です。
以下は私が18時頃に先日退勤した時の話。
あるベテラン社員がスーツケースをガラガラと引いて、同じエレベーターに乗り込んできました。そこで他の同僚社員と出くわした彼は、こう言います。
これから〇〇国に出張だよ
え、マジで? 何日くらい行くの?
現地の滞在時間は24時間(笑)。行きの移動で24時間、滞在は24時間、帰りの移動も24時間。死んじゃうよ~(笑)
商社マンやってるねー。気をつけて。
こんなことを笑顔で話していました。
私が商社に転職した時、まず思ったのは「出張がめちゃくちゃ多いな」ということでした。まるで山手線のごとく飛行機を乗りこなし、実にエレガントに移動します。
昨晩までオフィスで会話していたのに、翌日の午後には東南アジアの国にいる。こんなことはザラです。
長時間労働を苦にしない、移動を厭わない。彼らの仕事に対するフィジカルは、屈強です。
頑丈な身体の持ち主は、商社マンに向きだといえるでしょう。
健康意識が高い
身体を壊しがちなイメージが強いかもしれませんが、優秀な商社マンには何らかのボディ・メンテナンスを継続しています。
「身体が資本」とはよくいったもので、筋トレ、マラソン、40代になっても社会人チームに所属してガンガン活動している人がいます。
また、暴飲暴食をしない健康意識の高い人も多いです。
下戸の商社マンもいますので、必ずしもお酒が飲める必要はありません(飲めた方がいい、というのは確かです)。
大切なのは自分を律し、身体をコントロールする健康意識を持つことです。
内向型は商社マンに向いていないのか?
職業イメージだけでとらえていないか
一般的な商社マンのイメージからすると、内向的にはあまり向いていない、外向型志向の職業に見えます。
それは、商社マンという職業イメージでとらえているからだと私は考えています。
外国語を自由自在に操り、海外を飛び回る。インテリでありながら、合コン、タワマンのような華やかなイメージを持つ人たち。たしかに、外向的な営業部門の人材にはピッタリなイメージです。
でも、果たしてそれがすべてでしょうか。
職務の内容で見る
職務内容、つまり仕事の内容で見る必要があります。
職業イメージだけで性格の適否を論じるのは、私は少し違うように思います。
ネアカの研究職がいていいように、陰気な商社マンがいたっていいのです。
サッカーにもフォワードとディフェンスがいるように、適材適所がありますよね。
仮に全員フォワードのサッカーチームがあったら? 結果は目に見えていますね。ボロボロに点を取られるはずです。
サッカーでいうディフェンスにあたるポジションは、内向型が得意とする仕事です。たとえば法務部、技術部、調達部の仕事などです。
商社という「職業」ではなく、その中にある幾多の「職務」で見る。そうすれば仕事の適正も、自ずと見えてくるはずです。超内向型の私が仕事を続けていられるのは、そのためです。
まとめ
それではまとめです。今日は心・技・体の3つの切り口で、商社マンの適正を見てきました。
- 心(性格・気質):
・前向き
・好奇心が旺盛
・他人に感心がある
・メンタルが強い
・チームワークを大事にする
・自社のリソースを躊躇なく使う - 技(知識・能力):
・論理的に考えられる
・情報処理能力が高い
・情報伝達能力が高い
・コミュニケーション能力が高い
・自学自習する力がある - 体(体力・耐性):
・身体が頑丈である
・健康意識が高い
さて、あなたの身近な商社マンはどうでしょうか。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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